夏の嵐と笑わない向日葵



「えー、嵐のケチ」


まるで唇をつきだすようにむくれる愛美さんを、嵐君はべりっと自分から引き剥がした。


「………………」


その勢いに圧倒されていると、一番最初に入ってきた、明るい感じの男の子とバチッと目が合った。


目が合ってしまった。
たしか、啓……さん??



「おー!!この子が嵐の初恋……ふぐ!?」


男の子が何かを言いかけた所で、嵐君が勢い良くその口を片手でふさいだ。強引に……ものすごく強引に。


「啓、君はしばらく喋らないほうが身のためだよ。でなきゃ、海に沈められるよ。嵐に」


眼鏡をかけた男の子…たもっちゃん?が無表情にそう言った。


「へー、この子がねぇ?」


愛美さんはというと、品定めするように、あたしをじろじろと見てくる。


なんだか、居心地が悪い。
愛美さん、嵐って呼び捨てにしてた……。すごく、仲良かったのかな。


そう思ったら、自分の中で黒くてドロドロした気持ちが沸き上がるのを感じた。


嫌だ、嵐君の彼女はあたしなのに。
簡単に触ってほしくない……とか。


でも、嵐君の友達だし、ちゃんとしなきゃ。


あたしは頭をブンブン振って、嵐君の友達に頭を下げた。