夏の嵐と笑わない向日葵



「っ……」


可愛いなんて、自分の事を思った事はなかった。
でも……嵐君に可愛いって言われると、やっぱり嬉しい。



「あ、あの……」

「んー?」


照れて、慌てるあたしを、嵐君は楽しそうに見つめる。


その余裕そうなのが悔しいと思うのに、それでもいいから甘えてしまいたいと思う。


「向日葵……?」


頬にそえられた手に、あたしは自身の手を重ねた。


「嵐君は……いつも余裕そうでずるい」


あたしの仕草に、言葉に少しでも動揺してくれたらいいのに。あたしばっかりが嵐君を好きみたいで辛い。


「っ…あのなぁ、俺は向日葵といる時は、いつも心臓バクバクだぞ?」

「え…?」

「聞いてみれば?」


そう言ってあたしのうなじに手を入れて、グイッと嵐君の胸に頭を引き寄せられる。


バクッ、バクッ、バクッ


「ほ、本当だ……」

「余裕なんて、いつもねーよ」


そう言ってあたしの頭を撫でる嵐君に、身を任せた。


やっぱり、嵐君の傍は安心する。
ここ以外に、あたしの落ち着ける場所はないと思えるくらいに。