それは、おばあちゃんが聞かせてくれた話。
あの日は、すごく暑い中学1年生の夏休みだった気がする。
両親が交通事故で亡くなり、あたしは空の青さも、夏の暑さも、花の彩りも何もかも感じられないほどに心が枯れてしまっていた。
それはまるで、胸にぽっかりと開いたかのような感覚。
そんなあたしを引き取ってくれたのが、田舎に住む、母方の祖母、真枝 雅子(まえだ まさこ)おばあちゃんだった。
「向日葵、ここにおったんね」
「……うん」
縁側に座り、ぼーっと一点を見つめるあたしの隣に、おばあちゃんが座る。
「向日葵、おばあちゃんにはね、親友がおったんよ」
「………」
相づちもしないあたしを気にするでもなく、おばあちゃんは話続ける。
「杏(あん)言うてな、今でも仲良しなんよ。そんでな、そこのお孫さんも、向日葵と同い歳なんや」
この時のあたしは、おばあちゃんの話を、どうでも良いと思ってた。
「ーーーって言うんやけど、向日葵の写真見せたらな、一目惚れしおってん。ふふっ、そら可愛い笑顔やったからな」
おばあちゃんはそう言いながら、あたしの頭を優しく撫でた。
「俺が、向日葵ちゃん守る言うてはりきってたよ。今度、遊びに来るよう、手紙でも出しとくかねぇ」
「そう…」
適当に返事をして、あたしはおばあちゃんの話をいつも聞き流していた気がする。
それでも、おばあちゃんは何度もあたしに話しかけてくれた。そして、2年が経った中学3年生の冬……。