レーザービームの王子様

お互い特に何か言ったわけではないけど、自然と私たちの足は駅の方向に向かっている。

ふと、今何時かな、と思ったタイミングで久我さんが腕時計に視線を落とすのが見えたから、私もそちらに目を向けた。



「……もうすぐ10時か」



私にも聞かせるような音量で、久我さんはつぶやく。

もう、そんな時間。駅前でひとり彼を待っていたときは、これからどうなるんだろうと気まずさや不安があったのに……久我さんと合流してから今まで、そんな感情はすっかり忘れてしまっていた。

……自分でも驚くくらい。時間が経つのが、早く感じてしまうほど。



「なんか、あっという間だったな」

「っえ?」



つい、必要以上に大きな声が出た。久我さんは、そんな私の反応にきょとんとしている。

とっさに顔を向けたその体勢のまま、かーっと頬に熱が集まるのを感じた。



「え。なに、その反応」

「や……っ、な、なんでもないです」



あわてて前に向き直り、私はぶんぶん彼に向かって手を振る。

不思議そうに目をまたたかせているものの、久我さんはそれ以上追及して来なくて。ひそかに安堵しながら、そっと自分の胸に片手をあてた。


……びっくり、した。

だって久我さん……私とおんなじこと、考えてたんだもの。


あまり顔は動かさないまま、ちらりと彼を盗み見た。

まっすぐ前を向く、端整な横顔。今自分の隣りにいるこのひとは、1軍でもバリバリ活躍しちゃうようなプロ野球選手で。

なりゆきとはいえ……私、こんなすごい人と水族館行ったりごはん食べたりしたんだ。少し前までは、こんなこと夢にも思ってなかったよ。

……今もちょっと、夢なんじゃないかって思うけど。