レーザービームの王子様

「ん? どうした、すみれ」



ぐるりと顔を向けた状態で急に静止した私を不思議に思ったのか、久我さんが小首をかしげて訊ねる。

その言葉にも、私はすぐ反応できなくて。


……あの、ものすごく今さら、だけど。

なんかこの体勢、距離近くない……??!


意識したとたん、ぶわっと頬に熱が集まる。

そしてそんな反応をしてしまっているのを知られないよう、視線を逸らしながら自分の顔の前で両手のひらを向けた。



「や、あの。離れてください」

「なんで?」



『なんで』とか言いやがります??!!!

この近すぎる距離、異常だってわかんないのかな……?!


相変わらず久我さんと水槽に挟まれるような形になっているから、自力では抜け出せそうもない。

あくまで視線は合わせられないまま、再度口を開く。



「近い、です。必要以上に」

「そうかな」



『そうかな』とか言いやがります??!!!

なんだか答える声が笑いを含んでいるような気がしたから、顔の前の手はそのままにそっと彼を盗み見た。

案の定、私を見下ろす久我さんの口元は楽しげに弧を描いていて。


……絶ッッ対このひと、私の反応見て遊んでる……!



「あの、こ、こんなに近付く意味がわからないんですけど……っ!」



夜間ということもあり、あたりは大人……というかいい雰囲気のカップルばかりで、みんなひそめた声で恋人との時間を楽しんでいる。

目立ってしまわないよう、私も抑えた声音で抗議した。