レーザービームの王子様

「え、……ここ、ですか?」

「うん」



あっさりうなずいて、久我さんは建物の入口へと向かって行く。

立ち止まって惚けていた私は、そんな彼をあわてて追いかけた。



「ちょ、久我さん……っどうして、水族館なんですか?」

「こないだの試合のMVPの副賞で、ここの年間ペアパスポートもらったんだよ。他に一緒に来てくれる人もいないから、せっかくだしすみれを巻き込んでみた」



歩きながらも、ハイ、と隣りの彼からパスポートを渡される。

少しためらってからそれを受け取り、パスを見せて受付を通過する久我さんに続いて館内へと足を踏み入れた。


……『他に一緒に来てくれる人もいないから』って、今言ったよね?

これは、自然にあの話題を出せるチャンス?



「巻き込んでみた、って。……久我さん、彼女いるんじゃないんですか?」



内心緊張しながらも、努めてさりげない風を装って訊ねる。

私の質問に、久我さんはなんだか呆れ顔でこちらを振り返った。



「あのなあ。もし彼女いたら、きみを食事に誘ったりしないだろ」

「……意外。そういうの、ちゃんとしてる人なんだ」

「ああ? なんだと?」



口調はめちゃくちゃガラ悪いけど、私に向けている表情は苦笑といった感じ。

……そっか。久我さん、彼女いないんだ。

頭の中で引っかかっていた問題が解消されて、自分の心が軽くなるのがわかる。

自然とにやけそうになってしまう口元を、意識的に引き締めた。