レーザービームの王子様

「ご、ごめんなさい」

「いーえ。でもそういうときは、『ありがとう』の方がうれしいかな」



久我さんがニッと白い歯を見せて笑う。ドキドキと高鳴る胸を自覚しながら、小さくくちびるを動かした。



「ありがとう、……ございます」

「うん、どういたしまして」



なに、素直に言うこと聞いてんの。なんでこんな、顔が熱いの。

今の自分、いつもの私じゃない。いくら相手がかっこいい人でも、そんな簡単に、ときめいてなんかやらないのに。


久我さんは、私の心を乱す。とても鮮やかに、私の胸を高鳴らせる。

こんなの──こんなのって、たぶん、良くない。

身の丈に合わない相手に、こんなふうに、ときめいちゃいけない。


並んで歩く足は止めないまま、左胸のあたりに手をあててそっと深呼吸する。

……大丈夫。久我さんといると、心臓がうるさくなってばかりなのは……きっと、慣れないやり取りに驚いて、ドキドキしてるだけだ。

ほら、よくある、つり橋効果みたいなもの。有名人と並んでいるのが後ろめたくて、勝手にハラハラしているだけ。


そして久我さんがやたら私に構うのは、きっと私が、今まで彼のまわりにいた女性と違うタイプだったからなんじゃないかなって思うの。

甘いものばっかり食べてたら、たまには塩辛いものも食べたくなる的な? ……いや食べるとかそんないかがわしい意味じゃなくて!

どう考えても久我さん、相当おモテになってそうですし。女関係不自由してなさそうな彼がわざわざ食事に誘ってみたくなるくらい、私が天然記念物級にめずらしいタイプだったってことで。


悶々としながらそんなふうに思い込もうとしていた私は、はたとあることに気付く。

そうだ。こんなふうに私と会ったりしているけど、久我さんは女性にまったく不自由しないスペックを持ってる人。

……彼女とか、いるんじゃないの?