レーザービームの王子様

……そんな、無邪気な笑顔。軽々しく、見せないで欲しい。

男の人とこうやって並んで歩くなんてこと、めったにないんだから……ただでさえ、落ち着かないっていうのに。

ああもう、私、単純。ちょっと顔がいいからって、笑いかけられるたびにいちいち反応してたら心臓もたないってば。



「………」



こんなはずじゃ、なかったのになあ。こんなに近付くつもりなんて、なかったのに。

だって、久我さんは、プロ野球選手で。しがないOLの私なんかとは、住む世界が違う人で。



「すみれ、前、危ない」



ついぼんやりしてしまっていたのか、すれ違う人とぶつかりかける。

いち早く気付いたらしい久我さんが、私の肩を抱いて引き寄せた。

急激に距離が縮まったとたん、彼から柔軟剤のようないい香りがして。既視感のあるそれに、泥酔した久我さんを家に送り届けたあの夜の光景が、一瞬にして頭の中でよみがえる。



『……すみれ、シャンプーのいいにおいする』



あのとき間近で見た久我さんの端整な顔。低い声。腕を掴む手のひらの熱さ。

あれは、久我さんが寝ぼけてただけだったんだから──もう二度と思い出すまいって、言い聞かせてたのに。


不可抗力で体温が上昇するのを感じた私は、あわてて彼と距離をとる。