レーザービームの王子様

「久我さん? こんなところで寝てないで、帰りますよ」



組んだ腕の隙間から少しだけ覗く顔はほんのり赤く、それなりに彼が酔っているのだと推測できる。

とりあえず抑えた声音で呼びかけてみたけど、規則正しく上下する背中は変わらなかった。



「おーい、久我さ~ん」



今度はさっきよりも大きな声で、ついでに軽く肩を揺すってみる。

……なのに起きないって、この人どんだけ熟睡してるんだ。

もしかして、結構疲れてるのかな。スポーツするのが仕事って、やっぱりかなり消耗するだろうし。……だからってこのままにしておくわけにもいかないけど。

どうしよう。一応この人は身体が資本のアスリートだから、あんまり手荒く揺すったりしてプロ仕込みの筋肉に刺激与えたくないし。筋肉は大事。



「……困ったひとだな」



思わず顔をしかめながら、私はつぶやく。

すると、なぜかそこで久我さんがピクリと反応を見せた。

ん、という小さなうめき声の後、ゆっくりそのまぶたが押し上げられていく。



「あ、起きました?」



ほっとして声をかけると、薄く開いた瞳と視線が交わる。

彼は2、3度まばたきをして、そのままの体勢で口を開いた。



「……すみれだ」



熱っぽい、掠れた声で名前を呼ばれ、深く考える間もなく心臓がはねる。

今さらながら至近距離を意識してしまい、勝手に体温が上昇した。