レーザービームの王子様

言葉にしないまでも、私の疑問は感じとったらしい。笑い混じりにむっちゃんが続ける。



《今はすっかり夢の中だけど、尚人くんさっきまでスマホ片手に『すみれから返信が来ない~』ってめちゃくちゃ俺に絡んで来てたんだよ。ちょうどすみれちゃんとのトーク画面開きっぱなしになってたから、好都合と思って電話しちゃった》

「ええっ、好都合って……さすがにひどくない? むっちゃん」

《こっちも困ってるんだよ~。というわけで、身柄引き受け人よろしく!》

「ちょっ、」



こちらの言葉なんてお構いなしで、プツリと通話は途切れた。

【通話終了】の文字が表示されたディスプレイを見つめ、つい「ええ……?」とひとりごとがもれる。


うそでしょ、ほんとに私が行くの?

酔っ払いの引き取りって……私、そこまで久我さんと親しくないんですけど。


心の中で不満をたれ流しつつもさっきの電話を思い出し、再度アプリを開いてみる。

するとたしかに久我さんからは、なぜか敬語で【お元気ですか?】というメッセージがひとことだけ届いていた。


むっちゃんの口ぶりだと久我さんは随分返信を待っているようだったけど、送信された時間を見てみればつい15分ほど前だ。ちょうど、私がお風呂に入っていた時間帯。

その短い時間も待てないとか、……なんというか、久我さん相当酔っ払って面倒くさそうな感じ?

うわー、行きたくない。あんな図体でかい酔っ払いなんて、相手にしたくないですよー。



「はあ……」



だけど、こうなったら仕方ない。深く息を吐いてベッドから立ち上がった。

むっちゃんが困ってるのは、ほんとみたいだし。あのお店には相当お世話になってるから、見て見ぬふりはできない。

ていうか、いい大人がなにやってるんだ久我 尚人……! 一野球ファンとして、迷惑な酔いどれ外野手に喝を入れてやるわ!

ほとんど無理やり自分を奮い立たせ、私は着替えるべくクローゼットへと向かった。