「すみません深町さぁん、これなんですけど~~」



自分を呼ぶ甘えた声に振り向くと、職場の後輩である小柳(こやなぎ)さんがA4サイズの書類片手に立っていた。

私は椅子を動かし、身体をデスクから彼女の方へと向ける。



「どうしたの? 小柳さん」

「このオーダー、千葉の倉庫にある在庫が一致してないらしいんですよー。荷主から連絡来たんですけど、どうしたらいいですか?」

「ああ、そういうときは──」



私が勤めているのは樹脂原料を扱う専門商社。そこで営業事務をしている。

つい2ヶ月前にできたばかりの後輩にひと通り指示を出した後、思い出したように付け加えてみた。



「そういえば私、今日午後休もらってるんだけど。小柳さん覚えて、」

「えええそうでしたっけ??! やーんどうしようそれなら私も休みます!!」

「……第1グループの女神を目の保養にしながらがんばって」



私たちが所属するのは営業第2グループ。そして第1グループには、誰もが認める美人社員・柴咲(しばさき)さんという女性の先輩がいるのだ。

仕事疲れには栄養ドリンクとアルコールと見目麗しい人(男女問わず)に限る。そう考えてぽんと肩を叩きながら激励すれば、ザ・ゆとり世代代表のような小柳さんは「それでも無理ですよ~~」とハッキリ拒絶した。まあ私もゆとり世代ですが。