総司のセリフは若干耳が痛い。私は苦虫を噛み潰したような表情でスマホをバッグにしまった。


最初からずっとこんな感じ。遊ぶとか遊ばれるとか、そんな色っぽい雰囲気は皆無だ。

いや、それでいいんだけど。色っぽい雰囲気なんてならなくていいんだけど。



「と、とにかく。私は遊ばれてないし、意外と久我さんいい人だったから、問題ないです」



キッパリ言って、グラスに残っていたウーロンハイをのどに流し込む。

カウンターに頬杖をついてそんな私を眺めていた総司が、ふっと息を吐いた。



「……こっちとしては、問題あるんだけど」

「え?」



小さなつぶやきをうまく聞き取れずに、思わず目をまたたかせた。

総司はもう1度軽くため息をついたかと思えば、私に向かってひらひらと片手を振る。



「なんでもない。……すみれ、今はこんな簡単にやり取りできてるかもしんねぇけど、相手は俺らと住む世界が違う有名人なんだからな。そこんとこ、ちゃんと自覚しろよ」



幼い頃から、総司はいつも私に対して年上ぶった説教をして来た。特に、お兄ちゃんが亡くなってからはそれが顕著になった気がする。

私の、兄代わりのつもりなのだと思う。その気持ちはありがたいけど、お互いもういい大人だ。自分のことくらい、自分でなんとかできる。