けれど私のそんな杞憂とはウラハラに、今日までにした久我さんとのやり取りはなんとも危険なモノとはかけ離れていると思う。

さすがにというか、電話はしたことない。何度かしたのはメッセージアプリを使ったいくつかの会話だけ。

それも別に、ヒトから責められるようなものでは……。



「おまえ、遊ばれてんだよ。目ぇ覚ませ」

「な……っ目なんて最初から覚めてるし! 遊ばれてもないし!」

「ふーん」



鼻を鳴らしてこちらを流し見る総司は変わらずジト目。ムカつく。

私の性格を知ってるからか、ミーハーだな、みたいなツッコミはして来ない。そこはまあさすがだ。

けれど幼なじみの態度にイラついた私は、ゴソゴソと自分のバッグの中を探った。



「そんなに言うなら、自分でも見てみなよ。私と久我さんのやり取り」



言い放って、総司にも見えるようにスマホをカウンターの上へと置く。

なぜかむっちゃんまでも興味深そうに覗き込んで来たけど、別に気にしない。私はスマホを操作して、久我さんとのトーク画面を表示した。


1番最近のやり取りは、一昨日の朝のものだ。



【久我 尚人】
『おはよう。昨日のウィングスの試合観た? 俺どうだった?』


【深町 すみれ】
『おはようございます。昨日の試合は内角低めのボールへの反応がイマイチでした。まだまだ修行が足りませんね。』


【久我 尚人】
『あざっす勉強になりまっす』



同じタイミングで私のスマホから視線を上げた男ふたりが、同じタイミングで顔を見合わせる。



「……師匠と弟子?」

「どこまでも偉そうだなおまえ」

「やめて自分でも女子力の低さはわかってる……」