レーザービームの王子様

「そんなわけだから、送るのはさすがに無理だけど。もう遅いし帰り気を付けて」

「……ありがとうございます」



別に、送ってもらおうなんてこれっぽっちも思ってなかったですけどね。相手は有名人だし、というかそもそも男にそこまで求めてないし。


だけどこの人案外フェミニストなのかなあ、なんてちらっと思ったところで、目の前の人物はとたんに意地悪な笑みを浮かべる。



「ほんと、気を付けてもらわないと。暗い中だと、変質者も気が強いじゃじゃ馬かそうでないかは区別がつかないからな」

「ちょっとそれどういう意味ですか???」



ものすっごく失礼なセリフが降って来たので、私は思わず背伸びしながら不機嫌顔で抗議。

やっぱりこの人、口悪いし最低だ。さっきは条件反射的にときめいてしまったけれど、女がみんな自分にメロメロになると思ったら大間違いだぞ久我 尚人このやろう……!


私から逃れるようにのけぞりつつ、今度こそ声に出して笑った久我さん。

けれどもふと、何かに気付いて目をまたたかせた。



「ああほら、口の横にみたらしだんごのタレついてるし」

「へ、えっ、どこ?!」



つい敬語を忘れて、ぺたぺたと自分の口元をさわる。

子どもみたいで、普通に恥ずかしい。うつむき気味に顔をこすっていたら、ふっと、頭上から笑みをこぼす気配がした。



「そこじゃない。こっち」



笑い混じりの言葉と同時に、ぐいっと両手で顔を上向かせられた。

かと思えば、少しかさついた親指が私のくちびるの左横をなぞって。