レーザービームの王子様

慣れた道を運転しながら考える。どうして尾形は、あんなに機嫌が悪かったのか。

しかも、『ムカついたからすみれに酒飲ませて潰した』って……今日はやたら絡んで来たし、彼女にあたったということは間違いなく不機嫌の理由は俺絡みなのだろう。

アイツはすみれに一度告白してフラれていて、それでもふたりの関係は“幼なじみ”のままだったから、彼女と恋人になって以降必然的に俺と尾形が顔を合わせる機会も何度かあった。

そのときもまあ、多少チクリチクリと嫌味は言われたけど。それでも、今日ほど露骨に不機嫌な顔はされてなかった気がする。

……なにした、俺。いやむしろ、すみれが何か言ったのか?


考え事をしながら運転していたら、あっという間に自宅マンションへとたどり着いた。

駐車場に車を停めてひと息ついたところで、助手席のすみれが「うーん」と寝返りをうって目を開ける。



「すみれ? 俺のこと、わかるか?」

「……ひさとくん?」

「うん」



最近ようやくまともに呼んでくれるようになった俺の名前をつぶやいた彼女に、つい頬が緩む。

そのまま髪を撫でてやると、すみれはぼーっとしたまま目をしばたかせる。



「あれ……わたし……」

「すみれ、尾形に飲まされまくったせいで爆睡してたんだよ。俺が連絡もらって迎えに行って、んでここはウチのマンションの駐車場」

「……そっかぁ」



未だ意識がハッキリしていないのか、舌足らずにうなずいて俺のされるがままになっているすみれ。

ああ、かわいい。さっきの尾形のムカつく態度に対する怒りが霞むくらいかわいい。

酔ってもすみれ、ここまでぼんやりすることなかったからなー。めずらしいものが見れて、今ものすごく満ち足りた気分だ。