レーザービームの王子様

「ほらすみれ、行くぞ」



軽く彼女の肩を揺すって声をかけた。何やらむにゃむにゃつぶやいたけれど起きる様子はないから、仕方なく背中とひざ裏に手をまわして抱え上げる。



「ワァ尚人くん軽々とお姫様抱っこしちゃうなんてかっこいーい、惚れるーぅ」

「仕方ないでしょ本人起きないんだから……ドア開けてもらえますか」

「はいはい」



さっきのキャピキャピした裏声が嘘みたいに普通のトーンでドアを開けてくれる青司さん。ほんとこのおっさんノリ良いよな。

去り際、ちらりとカウンター席に座ったままの尾形へ目を向けてみる。ヤツはおもしろくなさそうに歪めた顔を隠そうともしないまま、あげく盛大に舌打ちしてみせた。



「あーあ、ムカつくわあ。ムカつくからむっちゃん、1番高い酒ちょーだい。久我のツケで」

「てめぇ尾形いい加減にしねぇとケツバットすんぞ」

「はいよー総司くん」

「止めろよ青司さんも……!」



最後までバタバタだ。俺は爆睡中のすみれとともに【むつみ屋】を後にした。

助手席に寝かせた彼女にシートベルトをつけてやりながら、結局あの男は何だったんだとため息を吐く。

自分も運転席に乗り込み、顔バレ防止に被っていたキャップを外した。どう考えてもここから彼女の家に行くよりは俺の家の方が近いので、今夜はこのままウチに連れて行くことにする。

どうせ細々したお泊まりグッズは常に置いてあるのだ。彼女がウチで目を覚ましたとして、今さら焦ることもないだろう。