フォローを入れるなりなぜかじーっと見つめられ、思わずつっこみながらテーブルにゼリーとスプーンを置いた。

しかもこちらを見るその表情が、どことなく拗ねているような何か言いたげな。そんな微妙なものだったから余計に戸惑う。


……んん?



「あの、久我さん?」

「……やっぱりすみれ、覚えてないよなあ」



ぽつりとつぶやき、私が何か返す前に彼は続ける。



「俺たちさ。橙李さんのお通夜のときが、初対面だったわけじゃないんだけど」

「え……ええっ?!!」



久我さんのセリフに驚きすぎて、つい大きな声が出てしまった。

え??! 【むつみ屋】でもあの日でもなく、さらに前があったの??!



「そ、え、……い、いつですか……?」



こくりと唾を飲み込んで、おそるおそる訊ねた。

私の質問を受け、久我さんは答えるためか一度口を開いて。



「………」



けれども何やら逡巡したらしい数秒後、結局何も言うことなくパクリと口を閉じた。



「え?! なんで黙るんですか!」

「いや……この話はマジでヘタレすぎて言えねぇわ……」

「えええそんな、ここまで言っといて!」

「や、うん。言わない」



私から視線を逸らしつつ自分の口元にケガをしている左手を添え、完全に決意してしまったらしい久我さん。

むむむ……これは、ほんとにもう教えてもらえなさそうだ。