レーザービームの王子様

「あ、お母さん? 私……すみれだけど」

《どうしたのー電話なんてめずらしい。元気? 最近暑いけど夏バテしてない?》



相変わらずなお母さんののんびり声に、少し落ち着きを取り戻した。

ふう、と小さく息をついて、私は横髪を耳にかける。



「元気元気。ていうかついこないだ会ったでしょ」

《そうだけど、親としては子どもがちゃんと暮らしてるか心配なのよ~》

「……あのさお母さん、ちょっと聞きたいことあるんだけど」



久我さんの打ったファウルボールが、一塁側スタンドへと吸い込まれていった。

そのボールをゲットしたのは、グローブをはめた10歳くらいの少年だ。拍手をする大人たちの真ん中で嬉々としてボールを掲げる様子は、とても楽しそう。



《えー? なあに?》

「……今私、テレビのプロ野球中継観てたんだけどさ」



2ストライクながら、なおもファウルで粘る久我さん。

その姿を両目に映しつつ、言葉を続ける。



「あの、東都ウィングスの、久我 尚人って……お兄ちゃんの高校の後輩、だよね?」

《………、》

「それでさ、もしかして久我さん──久我選手って、昔ウチに来たことあったり」



機械越しに、息を飲む気配。すみれ、と、電話口のお母さんが掠れた声で私を呼んだ。

私が疑問に思うより早く、彼女は“それ”を口にする。



《すみれ、もしかして──……“あのとき”のこと、思い出したの?》

「、え」