レーザービームの王子様

少数精鋭主義の宮ノ森高校野球部員数は、50人もいないくらい。

その中で、橙李お兄ちゃんは1年の頃からレギュラーに定着していた。

久我さんも、あの野球部にいたなら……おそらく同じように、レギュラー入りしていたことだろう。

もしそうなら、ふたりが関わり合うことだって多かったはずで。

つまり久我さんは……橙李お兄ちゃんを、知ってる?



『なあ、すみれ。実は俺たち──……ずっと前にも会ったことあるんだって言ったら、どうする?』



観覧車に乗った夜、彼自身「冗談だ」と撤回したあの言葉が、やっぱり本当だったんだとしたら。

久我さんが言った“ずっと前”──あれは、彼らが同じ宮ノ森高校にいたときのこと?


依然打席に立つ久我さんは、相手ピッチャーの変化球に空振り。これで1ボール1ストライクだ。

私はいてもたってもいられなくなって、テーブルに置いていたスマホを手に取った。


いくら記憶をたどっても、彼と会ったという出来事が思い出せない。

だけどもしかしたら、お母さんなら覚えているかも。あの頃お兄ちゃんは、同じ部の仲間をよく家に連れて来ていた。

だから、もし私と彼が過去に会っているんだとしたら、きっとそのときのはずだ。


実家の電話番号を入力し、発信ボタンをタップした。

呼び出し音が鳴っている間に、カウントは2ボール1ストライクへ。

プツ、と短い機械音の後、スピーカーから《もしもし?》とお母さんの声が聞こえた。