レーザービームの王子様

まさか、なんて期待はしちゃいけないと思う。

だって、相手はプロ野球界のスーパースター。身分違い甚だしいのは、自分でもわかってる。



『……頼むから。誰のものにも、ならないで欲しい』



──だけど。

さっきの、私に向ける久我さんの瞳は。



「あ、すみれそこは」



ぐるぐると考え込んでいた私は、いつの間にかアスファルトが崩れている部分に寄ってしまっていたらしい。

久我さんの声が聞こえたそのとき、割れて盛り上がっていた地面に足を引っかける。

思わず前につんのめりそうになった私を、間一髪のところで久我さんが抱きとめてくれた。



「わ、」

「危ねぇな」



久我さんの低い声が、すぐ耳元で聞こえる。

背後から自分のおなかにまわされている筋張った腕を見下ろしたとたん、かあっと沸騰しそうなくらい頬に熱が集まった。



「あ、ありがとう……」



言いながら、首を動かして後ろを振り向く。

至近距離で、久我さんと目が合った。



「(……あ、)」



私たちの間だけ、空気の熱量が変わる。

覚えのあるこれは、彼と一緒に水族館へ行ったとき。クラゲの水槽の、前で。


だけど今は、あのときよりもっと。



「久我さ……」



名前を呼びかけた私の頬に、彼の手が触れた。

大きな手。たくさんバットを振ってマメが潰れた、少しざらざらした手。

私が1番、触れられてドキドキする手。


無言のまま腰を引き寄せられ、彼と向き合う形に変えられた。

熱っぽい瞳に捕らわれる。視線を逸らせなくて、でも逸らしたくもない。