レーザービームの王子様

「俺に、こういうこと言う権利ないってわかってるけど」

「──、」

「……頼むから。誰のものにも、ならないで欲しい」



切なげに目を細めて。懇願するような、少し掠れた声で。

“久我 尚人”のこんな表情を、世の中の一体何人の女性が、知っているんだろう。

黒縁メガネの奥にある熱い瞳から、目が離せない。



「わ、私は、誰のものでもないです……」



行き場のない両手をだらりと身体の横に下げたまま、ほとんど無意識につぶやいた。

こくり。唾を飲み込んで久我さんの目を見つめる。



「生まれてこの方、彼氏なんていたことないし。……それに総司は、……えと、ほんとに私にとっては家族みたいなもので」

「……でも、あの男はすみれのことすきだろ」



間髪入れずにつっこまれ、ぐっと言葉に詰まる。

なんで久我さん、総司とはちょっとしか話したことないのにそんなところに気付くの。

はっきりと断定した言い方をしてるから、誤魔化すこともできない。私は小さく息を吐く。



「……すきだって、言われました。それでも私は、きょうだいみたいにしか思えなくて」

「………」

「たぶん私ずっと、総司を亡くなったお兄ちゃんの代わりみたいに思ってたんです。……最低ですけど」



そしてこれを本人に伝えるよりも先に、久我さんに話してしまうなんて。……やっぱり、弁解の余地なく最低。

だけど今、久我さんに誤解されたままなのは嫌だった。最低なことをしてるとわかってても……どうしても、嫌だったんだ。