低い声で私がつっこむと、総司は声に出して笑う。



「ははっ、冗談。……かわいいよ、おまえは。昔から」

「ッは、」

「とりあえず、距離詰めるなら無難にデートからかなー。来週中、仕事早く上がれそうな日連絡するから。そのつもりでいろよ」



私が何か言おうとする前に、また意地悪な笑みで顔を覗き込んでくる。



「それとも、このまままっすぐホテル行って手っ取り早く“男”の俺見せてもいいけど。どうする?」

「……っ遠慮します!!」

「なんだ。残念」



カッと顔を熱くさせた私の反応に気付いているのか、総司は満足そうに笑って再び前を向く。

私はといえば、今までと違いすぎる総司の態度に順応できず。バクバクうるさい心臓のあたりを、つないでいない方の右手でぎゅっと掴んだ。


な……なんなの、これ。これが、総司の“男”モードなの?

こんなの、総司じゃないみたいだ。……いや、今まで私に接してきてた総司こそが、ホンモノじゃなかったの?



「つーか俺、どうしても納得できないのが久我のことなんだけど。すみれの好みって、クールで王子っぽいヤツじゃん。昔っから、戦隊物のブルーを好きになってたじゃん。なのになんで久我?」

「……なにそれ。言ってることがよくわかんないんですけど」

「俺はまあともかく、久我だってブルータイプじゃないのにって話。戦隊物で言ったらアイツはさしずめブラックあたりだろ。もちろん俺はレッド」

「あんた自分で自分のことレッドとか図々しいにもほどがあるんじゃないの……??!」

「事実なんだから仕方ない」