レーザービームの王子様

「久我さん」



名前を呼ぶと、彼が私を見据える。

その眼差しに、こんなにも、胸が高鳴るようになってしまったのに。


……これでさよならなんて、嫌だ。


覚悟を決めるように、一度小さく深呼吸。

狭いゴンドラ内にも関わらず、私はすっくと立ち上がった。



「さっきから黙って聞いてりゃなんですか。『迷惑』って、それ誰が言ったんですか? 誰が決めたんですか?」

「……すみれ?」

「そりゃまあ、酔っ払った久我さんをお家に届けるのは多少っていうか体格差あるからなかなか結構大変でしたけど。でも久我さん、今日こうして、水族館連れてってくれたうえごはんまでご馳走してくれたじゃないですか。あのお店の料理全部おいしかったし、もうそれで全部チャラってことでいいじゃないですか」



相手に口出しさせないため一気にたくさんしゃべってるから、疲れるし呼吸も乱れる。

私を見上げている久我さんはぽかんとした表情をしていて、呆気にとられているのがわかるから少し可笑しい。

だけど私に、それを笑う余裕はなくて。なんだかもう、自分でもわけわかんないくらい必死で。


だって……だって久我さん、私のこと“特別”だって、言ったじゃない。

なのに簡単に離れてくの? 出会えたことを、なかったことにするの?



『うん、そうだな。あんたのせいじゃない』



東都ドームで再会したとき、ああやって言ってくれて、うれしかったのに。

私はもう──……久我さんのことを知らなかったことになんて、できないのに。