レーザービームの王子様

「もうすぐ地上だ」



窓の外を見て、久我さんがつぶやく。その横顔を、私は何ともやるせない気持ちで見ていた。

くるりと、彼がこちらに顔を向ける。



「今日は付き合ってくれてありがとなすみれ。お礼とか言って、無理やり連れ回して悪かった」

「いえ……私の方こそ」



無理やりとか、悪いだなんて、思ってない。

そうは思っても素直に言うのははばかれて、歯切れ悪く答える。

ふっと、久我さんがやわらかく表情を緩めた。



「ほんとにありがとう。最後にこうしてすみれとたくさん話せて、よかった」

「え、」



最後? それって、どういうこと?

困惑する私に、彼は続ける。



「すみれには散々ちょっかいかけて戸惑わせてたと思うけど……今日で最後にするって、決めてたんだ」

「なに……それ、」

「迷惑かけるのは、今日で終わり。教えてもらった連絡先もちゃんと消すし……もう、関わらないから安心して」



わけ、わかんない。

なんで……なんで、そんな。

ひとりだけ吹っ切れたみたいな表情で、勝手なこと言うの?


せっかく、“プロ野球選手の久我 尚人”じゃない彼の顔も知れたのに。

……もっと知りたいって、思い始めてるのに。

なのに久我さんは、また遠く離れてくの?



「……ッ、」



勝手に、私のこと決めつけて。

勝手に、『迷惑かけた』って思って。

そんなの──そんなの、悲しすぎる。