レーザービームの王子様

「俺があんまりプロ野球選手になるって言ってきかないから、それを飲む代わりに親父から条件を出されたんだ。大学は親父の指定したとこに通うことと、もし新卒でドラフト指名されなかった場合はスッパリ諦めろって」

「……それで、見事にプロ入りしたんですね」

「そう。ちなみに会社の方は姉貴の旦那が継ぐ予定だから、別にそっちも問題はないし」



久我さん、お姉さんいたんだ……っていうか、感心すべきはそこじゃない。


彼は、用意されたレールの上じゃなく、自分が決めた細く険しい道をつき進んだ。

それってとても、すごいことだ。



「……がんばったんですね、久我さん」



私のつぶやきに、久我さんはなぜか、一瞬驚いた顔をした。

けれどもすぐ、うれしそうに目元を緩める。



「がんばったよ。どうしても、なりたかったから」

「もしかして、小さい頃から将来の夢はプロ野球選手?」

「いや、違うな。……昔は、あたりまえのように父親の跡を継ぐもんなんだろうなって思ってた」



意外な言葉だ。私が黙っていると、彼は話を続ける。



「野球は最初、たぶん親が軽い気持ちで習わせたんだと思う。俺はどんどん好きになっていったけど、いつかは辞めなきゃいけないときが来るんだろうなってどこかで諦めてた」

「………」

「でも、高2のときにプロ野球選手になろうって決めた。……ならなきゃいけない、理由ができた」



……理由が、できた?

久我さんの言葉を疑問に思ったと同時、ふと真顔になった彼とはっきり目が合った。

力強い眼差しに射抜かれる。どくんと、大きく心臓が鳴った。