「クリスはさ、平気なの?
私がその…チャドとの話ばっかりして」
「…気にならないって言ったらウソになるけど」
やっぱり…
「…ごめんね」
「いいって。
長く一緒にいたんだからその分想い出もあるだろうし、
チャドはオレたちの共通の友達なんだから会話に出てもおかしくはないと思うよ」
「でも」
「隠すことないじゃん。
忘れることもない。
どんだけ好き合ってたかも知ってるし、
チャドのことはオレも好きだから仕方ないよ」
その言葉に胸が熱くなる。
「私がクリスだったらいやだもん。
本当に気をつける。ごめんね」
そう呟いた私に振り返り、クリスが呆れた顔をする。
「…お前さ、ずっとチャドと二人でいるの見せられてたんだから、
今更想い出話されるくらい何でもないよ。
今はオレが一緒にいるんだし」
「うん…」
だけど何だか、涙が出てしまうよ。
「…ずっと、チャドには適わないと思ってたよ。
当たり前だけど何年たってもあいつの方が1コ上だし、頭いいし、優しいし。
でっかい夢を持ってて、男の目から見ても格好よかったよ。
憧れてた。ずっと」
「……」
「だけどさ、これだったら勝てるなって思った瞬間がある。
アメリカに行くってチャドに言われた日から、それならオレの方がカンナを幸せに出来るんじゃないかって。
ずっとずっとそばにいることで誰かを幸せに出来るのなら、その相手はオレはカンナがいいなって、
そう思ってたんだ、昔から」
「…昔から?」
「そうだよ」
「小さい頃から?」
「うん」
ずっと、
ずっと私がチャドといる間も、クリスは私を好きでいてくれたのか。
涙を拭うと、クリスが少しだけ笑った。
「でもさ、あいにくだけど、
勉強とかはあいつみたいに教えてやれないから。
オレとカンナの成績はどっこいどっこいなんだし」
聞き捨てならない、その言葉。
「えー、それは私の方がいいよ!」
「ヨーロッパ史ではね。
物理ではオレの方が上だし」
「あんなの上って言わないよ!
いつも差なんて10点以内じゃん」
「…だからどっこいどっこいだって言ってんじゃん」
「……」
しばらくそんなやりとりをしてじっと睨み合って、
そのあまりのくだらなさに、二人で吹き出して笑ってしまう。
「しょーもないね」
「ほんとだよ」
クリスと一緒にいる時の空気は、こんなに暖かだ。

