さよならの見つけ方 第2章 *絶対温度*





「…誰も見てない?」






「…見てないよ、みんな寝てる」






「…先生は?」






「…教科書読んでる」






「…ホント?」






「うん」










ヨーロッパ史の授業中に、ひそひそと交わされる会話。



突っ伏して寝ているクラスメート達と、閉じられたカーテンから漏れてくる陽光。






遠い黒板の下で初老の教師が、何かを熱心に読み上げている。










二つくっつけられた机、



気だるい午後の授業、






教科書に隠れて、キスをした。










頬に添えられた指先が冷たくて、自分の頬の熱さを知る。










恋人としての、初めてのキス。






少しだけ、苦しいと感じた。











胸が痛くて、



心が、しびれて。










唇を離して見つめ合った後に、照れたようにクリスが顔を背けるから、

私も思わず両手で、頬をおさえてしまう。














「好きだよ」






「うん、私も」










“クリスが、好き”










不器用な告白も、目を合わせられないくらい上ずった心も、



涙が滲んでくるくらいの幸福感も充足感も。










透き通る瞳に見つめられると、何も言えなくなってしまうよ。







こんなに胸を焦がす想いなんて、二度と出来ないと思ってた。



あの日から、あの秋の日から、自分は永遠に一人なんだと勝手に殻に閉じこもって。










悲しいことも辛いことも、分かち合える人がいる。



眠れない夜に、心ごと寄り添ってくれる人がいる。










そのことがどんなに尊いことか、どんなに幸せなことか。










私はようやく、辿り着けたんだ――――