さよならの見つけ方 第2章 *絶対温度*


「…そりゃあ、私も昔は恋をしたし、

結婚を考えた女性もいたよ」






「じゃあどうして、一緒にならなかったの?

…なれなかったの?」






「うん。

彼女は体が弱くてね、家族に付き合いを反対されてしまったんだよ」






「そうなんだ…」






「昔は今よりももっと、結婚は大きなものだったから。

…大切に育てられた一人娘だったしな」






「…うん」










「私は職も安定していなかったし、

今となれば親御さんのお気持ちも分かるんだけどね。



会えなくなって何年も後に、亡くなったことを知人から聞いたよ」






「そっか…」






「ずっと昔の話だけどね」








「……」










「…大切な想い出というものは色褪せないと思っていたけれど、それは大きな勘違いだった。

どんどん、輪郭がぼやけてくるんだな」






「うん…」






「あんなに好きだった笑顔も、今ではぼんやりとしか思い出せない。

彼女のことは写真すら、残ってないんだ。

忘れてしまって当然なのかもな」






その言葉を聞いて、胸が痛くなる。










「この年になってようやく、

失ったものほど愛しいものもないんだと、痛感するよ」










白髪の増えたロバートを、そう言って寂しそうに笑うロバートを、抱き締めたいと強く思った。