さよならの見つけ方 第2章 *絶対温度*




天気がとても良かったのに、夕方を過ぎてから少し風が出た。



素肌をなぞる都会の風が、体温を奪って足早に逃げていく。










観覧車を降りる時にほどいた右手は、

まだ少しだけクリスの手の平の感触を、ぼんやりと残している。










「人が多いね」






「…うん」










夜のロンドンには人が溢れていた。







薄暗い空にぽつんと見える光。



ネオンが増える度に、気温はどんどん下がっていく。









ヴィクトリアのコーチセンターで帰りのバスの発車を待った。







喧騒と人の波と、どこかの店から聞こえてくる歌と、高い高いビルの影――――










私たちは二人きりだった。







どんなに人がたくさんいても、二人きりなんだと強く感じた。



動き始めたバスの中で、何も言わずにまた手をつなぎなおすと、

街の風に冷やされた心臓が、ぎゅっと切ない音を立てたような気がした。










クリスの映る風景が、強く心に残っていく。







ネオンに光る街も、街路樹の茂る夏の道も、

遠くで光る教会の灯りも。









来る時はずっと眠っていた道を、私たちはまた辿っていく。






何も言わず、何も考えず、



ただつないだ手の平の感触だけが、やけにリアルだった。