さよならの見つけ方 第2章 *絶対温度*


「あ、私あれ乗りたい」






「いいけど、お金足りんの?

15ポンドって書いてあるけど」






「多分、帰りのバス代抜いたらギリギリ」






「…並ぶかと思ったけど、

案外すいてるんだね」











街の中にいきなり現れた巨大な観覧車は、少し前まで世界一の大きさを誇るものだった。






丸いカプセルの形をした、大きなゴンドラ。



いつもなら定員ぎりぎりになるまで人が詰め込まれるそのゴンドラには、

平日の今日、私たちを含め10人程しか乗り込まなかった。










30分かけてロンドンの空を一回りする大きな観覧車、ロンドン・アイ。










透明なガラス板をはさんで、

視界いっぱいに広がる夕空。



足元ではビルや教会の尖塔や家の屋根屋根や、

テムズの川面が橙色に染まっていくのが分かる。










…ロンドンは街自体が一つの博物館だって、

一つの芸術作品だって、

誰かが言ってたっけ。














視界の先のずっと向こうで、地平線が柔らかく円を描こうとしているのが分かる。







地球は丸いんだと改めて気付かされる瞬間だけれど、







こんなに高く登っても宇宙には全く、手が届かないんだと思った。







透明なカプセルに閉じ込められて、その空の高さを息を詰めて見つめているだけだ。