さよならの見つけ方 第2章 *絶対温度*



「実はさ…」






言ってもいいのかなと、やっぱり少しだけためらった。



今までクリスにはチャドのこと、どんなことでも言えてきたのに。










「実はさ、ずっとロンドン来たかったの。

チャドと来る約束してたんだけど、結局二人で来れなかったから」










風に乗って運ばれてくる、ビッグベンの鐘の音。






歴史を紡ぐ、荘厳な響き。



その音は、心に少し悲しく響く。










失ってしまったものは、もう元には戻らない。



一秒を刻むこの音が、時の流れの絶対的な残酷さを私に思い知らせているようで。














夏の夕空。



舗装された川岸に咲く色とりどりの花々。






テムズのように大きな川の川沿いを歩くのは、素肌に、髪にとても気持ちがいいのだけれど、



水辺独特の匂いや、水面を通ってくる風が鼻先をくすぐって、何だか泣きたくなってしまう。










風を含んで揺れるスカートが、素足に絡み付いてくる。






さらさらと、柔らかく、まるで風そのものになったみたいに。














この世界は、きれい。






大好きな人が隣にいなくても、

もう二度と会えないのだとしても、ずっと変わることなく。






私の目に映る世界はいつだって七色の光に満ち溢れていて、






どんなに悲しい出来事が起こっても、

その光は毎日、地球へと降り注ぐんだろう。