歩き回って、ランチを食べて、
少しだけ買い物もして、たくさん話して、
何となくぷらぷらと、国会議事堂の近くまで来た。
ダブルデッカーやブラックキャブの行き交う通り。
高い時計塔の鐘の音が、辺りに響いている。
大きいなぁと、しばらく見とれていたかったけれど、そんなことも言っていられない。
この辺りまで来ると流石に、観光客の数も桁外れに多いのだ。
はぐれないように少しだけクリスとの距離を縮めると、シャツや髪の毛からせっけんの香りがした。
夜の公園に二人で行った時も、同じ香りがしていたっけ。
きっと、清潔感の溢れるこの香りが、クリスの匂いなのだろう。
人混みを避けるように大通りを抜けてテムズの川沿いに入ると、
少しだけ西に傾きかけた陽の、濃くなったイエローが広い川面に反射していた。
たくさんの船が行き交う、川面。
憧れていた、テムズ川のクルーズ。
何度も見るチャドとの夢はこの場所がよく舞台になっていた。
二人で来たいねと言っていた。
叶わない春の、約束を交わした日から。

