予定時刻を過ぎて現れたバスに乗り込んで、後ろの席に並んで座る。
車窓から流れていく、朝焼けの街が少しずつ目覚めていく風景。
ん、と手渡されたキャンディーを口に含むと、懐かしい味がした。
終点であるロンドンまで約2時間。
ヴィクトリア駅の近くに、ちょうど9時の到着予定だ。
「寝てもいい?」
と尋ねると、窓の外を眺めたままのクリスが「んー」とだけ答える。
「ちゃんと起こしてね」
「はいはい」
「絶対ね」
「わかったって」
まぶたを閉じると、暖かい何かが肩を覆ってきた。
クリスが羽織っていた、ベストだろう。
目を瞑ったまま小さく微笑むと、バスの揺れ幅が心地よい。
温かい空気も、
閉じたまぶたの向こう側で、
少しだけ眩しい朝日も――――

