霧深いイギリスの朝。
夕陽とまごう程、橙に装った朝日。
道端に佇むポストの赤色がいつもより余計に濃く見える。
…なんてすごい濃度の朝だろう。
少しだけよそ行きのワンピースをひるがえしながらバスケットを抱えてバス停に着くと、クリスがもう来ていた。
おそい、と言いながら、ベンチに置かれていたのであろう雑誌から顔を上げる。
「ごめん、
意外と支度に手間取っちゃって」
胸の上に手を置いて、はずむ息を抑えながらそう言うと、
「今日、何かいつもと違う」
と答えてくる。
「髪、巻いてみたんだ。
久し振りのロンドンだし」
えへへと笑いながら毛先を指でくるくる巻くと、
「ふーん」とだけ、素っ気ない返事が返ってくる。
そこはお世辞でも、嘘でも冗談でもいいから、
「似合うじゃん」とか言うべきところなんじゃないかな…

