長い夏休みが残り半分を切った。
クリスとはあれから特別会ってはいないけれど、毎夜眠る前の電話を欠かさずにしている。
「最近くもりの日が少ないね」
とか
「日が長くなったよね」
とかいう何でもない会話の中で、
壁にかけられたカレンダーの日にちを数えながら私は、受話器の向こう側にいるクリスに尋ねた。
「ね、来週の木曜日、
ロンドンに行かない?」
「…ロンドン?」
おやすみモードに突入しかけていたクリスの声のトーンが、少しだけ変わる。
――――私たちの住む街からロンドンまでは、バスで約2時間かかる。
遠くはないけれど、すぐには行けない距離。
特別なことがない限り、なかなか足が向かわない。
「なんで?
欲しいものあるとか?」
「ううん、ただ何となく行きたいなぁと思って。
私、ここ何年も行ってないから」
「確かに、オレも行ってない」
「ね、なら行こうよ。
バイト?」
「来週でしょ?
休みだよ」
「ホント?行ける?」
「行ける」
「じゃあさ、どうせ行くんなら朝早くから行こうよ」
「…店開いてないじゃん、寒いし」
「いいじゃん。
ハイド・パークでサンドイッチ食べよう。
作っていくから」
「起きれんの?」
「そこはまぁ、頑張るよ」
「遅れたら帰るからね」
それから木曜まで、そんな会話を毎日した。

