小さく、おやすみと声がして、通信の途絶える音がする。
冷たい冷たい、機械音。
――――電波がクリスの体温を、運んできてくれればいいのに。
受話器からもクリスの体温が、直接伝わればいいのに。
おかしいかな。
さっき別れたばかりなのに、もう一度抱き締めてほしいなんて思ってる。
いつもこんなに一緒にいるのに、想いはきっと無限なんだろう。
溢れて制御出来ない気持ちなんて、私は今まで知らなかった。
こんなに心穏やかな夜に、胸が焦がされて泣きたくなるような気持ちも、
分かり合えることの、切なさも寂しさも、
ずっと堪えてきたはずの痛みも――――
クリスが弱くしたんだよ。
離れてるときは、こんなに。
こんなにこんなに、私は弱虫だ。
もうすぐまたこの街に、春が巡ってくる。
静かに更けていく、サウスロンドンの夜。
細目に窓を開けると、少し肌寒い風と、
いつかチャドが教えてくれた、春の星空。
視界の中で、星が流れてくれたらいいのに…。
今叶えたい願いは、ひとつだけ。
この瞬間にもきっと私を想ってくれているだろう彼と、
いつまでも体温を、分け合えますように。
眠れない夜、
遠い星空。
同じように空を見上げているだろう世界中の人に、愛が降り注いでくれればいい――――
*fin*
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第3章に続く

