「じゃあ、なんで」

「それはね。瑞穂、倒れたときに蓮くんにお姫様だっこされたんだよ」

「え、お姫様だっこ」
少女漫画だと憧れのシチュエーションが自分に当てはまるなんて驚きだった。

「何、担架の方がよかった?」

そう、横から話しかけてきたのは蓮だった。
今登校してきたみたいだ。

「いや、担架は嫌だけど……」
担架もそれはそれで目立ちそうだし。

「いいな、お姫様だっこ」

「全然よくないよっ。そのせいで噂になってるし、学校来るときいろんな人に見られたし。最悪」

「人の噂も七十五日、だよ。瑞穂ちゃん」と、蓮がフォローするけど、そんなフォローいらないんだけど。

「だったら、私はその間学校休みます」

「冗談やめてよ、あたし一人になっちゃうじゃん」

私と花音はクラスで唯一の友だちだから、どっちかが休んだら一人になってしまう。

けど、そんなの気にしてられるか。
許せ、花音。

「じゃあ、瑞穂ちゃんがいない間、水谷さん独り占めするよ」

「どうぞどうぞ、イチャイチャでもラブラブでもしといてください」

「そんなこと言わないでよ。あたし、山本くんと一緒とか嫌だよ」
花音は本人の目の前で本当に嫌そうな顔をしていた。

「なんで俺、こんなに嫌われてんの」

蓮はなんで嫌われているのか分かっていないようだ。