「私、お菓子作るの苦手で。チョコ溶かして固めるくらいしかできないんだよ」



おいしくないものをあげるより、お店で売っている見た目抜群、味抜群のチョコレートを上げたほうが蓮も喜ぶと思うんだよね。



「うーん。でも、手作りのほうが気持ちこもる気がするし。俺のために苦手なお菓子作りに挑戦してくれたんだって嬉しく思うんじゃないかな」



お店のだって、蓮のために選ぶんだけどなぁ。



「手作りのほうが、うれしいのかな」

「絶対」



花音が前のめりで言う。



「でも」



失敗する未来しか見えないんだけど。



「俺は藤野さんが作ったものならどんなものでもうれしいけどな」



鎌田君、いつの間に。

「チョコなら私があげるから」と、花音が鎌田君をつついた。



「友チョコの余りものはなあ」



花音は毎年鎌田君に友チョコのあまりをあげているみたいだけど。それって、普通に友チョコなのでは。



「文句言う人にはあげません」