「そういえば、瑞穂ちゃんの負けだね」

夜、一緒に勉強をしていると蓮がペンを止めて言った。

「何が」

「初めて会ったとき言ってたよね、忘れたの」

何か言ったかな。

「好きになったら負けってやつ。瑞穂ちゃんが言ってきたんだよ」

あー、そんなことを言った気がする。あのときは本当にどうかしていた。てか、なんで覚えてるの。黒歴史並みに恥ずかしい。

「忘れてください」

「ムリ。あのときの瑞穂ちゃん可愛かったし」

ひどい。

「てか、蓮も負けだよね」

「先に好きって言ったのは瑞穂ちゃんだよ」

あれは言わされたの方が正しい気がする。

「負けた方は罰ゲームだった? 」

「潔いね。罰ゲームより俺のお願い聞いてくれる? 」

「わかった、なんでもこい」

どんな無理を言ってくるのかと構えていると、蓮がいつにもなく真剣な表情で見つめてきた。

「瑞穂ちゃん、この先もずっと一緒にいてくれる? 」

プロポーズともとれるその言葉に胸が高まる。

そんなの当たり前。

「だって、私たち許嫁でしょ」

仕方なくでも、妥協でもなく、私は蓮と許嫁になって良かったという思いを込めてそう言った。

fin.