「もし、嫌だったら――」

ムリして来なくてもいいよ、と言おうとしたとき、口に蓮の人差し指を当てられて言えなかった。

「もし、瑞穂ちゃんが誘ってなくても俺はついていったからね。瑞穂ちゃんがあいつとデートなんて考えられないから、邪魔しに行ってやるから」
そこにはさっきの憂いな声はなく、いつもの蓮に戻っていた。

邪魔しにって。明日のダブルデートが嫌なんじゃなくて、私と鎌田くんがデートすることが嫌なのか。見当違いだった。

でも、そしたらまともなダブルデートなんかできないよね。絶対、邪魔してくるよね。まぁ、私にとっては鎌田くんと二人でっていうのは心臓に悪いから願ったり叶ったりなんだけど。

「だから、瑞穂ちゃんが謝る必要はないよ。気にしないで」
いつもと同じようなノリでそう言った。

「うん」
蓮のきらきらな笑顔にやられた。だから、ただ頷くしかできなかった。

やっぱり、顔がいいというのは正義だよ。普通の台詞でも様になるし、普通でないかっこいい、しかも優しさを含んだ今の台詞だと余計に胸に刺さってくる。
首をこてんって、傾けるとかも反則だよ。

でも、蓮のおかげで心にひっかかっていたもやもやが溶けてなくなった。