【完】恋なんてするものか!





奥に見つけた梓のシルエット。




振り向いて、私の顔を見ると、微笑んだ彼。



私はそのまま、梓の胸に飛び込んだ。




「お、おい、いきなり大胆だな。」




と、梓は言う。



戸惑いながらも、どこか嬉しそうに。




「ごめん......ごめんなさい.....」




「なんで謝るんだよ。」




「私......梓のこと信じるって言ったのに.....信じきれなかった....宮本さんとのこと....疑っちゃった.....」




あのとき、もう少し体育館にいたら。



梓の本当の気持ちを、この耳で直接聞けたのに。




「やっぱり来てたか......」




「途中で抜け出して.....でもそのあと、美華から動画見せてもらった.....」




「いや、あれは俺も悪かった。不安な思いさせて、ごめん。」




「ううん。」



私の背中を擦りながら、梓は優しく言った。




梓は悪くない。



考えてみれば、どんな時だって、梓は私の事を思ってくれてた。




いつだって私のそばにいてくれた。



それなのに、勝手に不安ななるのは私で。




1人で辛くなって、勝手に勘違いして。