席につく間際、あいつは私の耳に口を寄せると、
「案外、いい声出るんだな。」
と、囁いた。
ボンッと、顔が赤くなったのがわかる。
くっそーーーー!!
ムカつく!
なんで赤くなってる、私!
なんで黒河ひとり相手するのに、手こずってんの!
体が熱くてボーッとする。
耳に直接入ってきたあいつの声が、ぐるぐると頭の中で回っている。
リピートされたくない声とセリフが、半永久的に頭を回っていて。
授業に集中したいのに上の空。
気がつけばボーっとしていた。
これだから、女の扱いになれてる男子は嫌いだ。
私がなれてないことばっかりしてきて、私を悩ませる。
そのことで悩んで、うまく対処できない自分にイライラしてるんだけど。
でもまだ救いなのは、基本的に休み時間はほかの女子に呼ばれて教室にいないこと。
からかってくるのも、1日1回くらいだからまだ耐えられる。
「香澄!帰ろ!!」
放課後。
美華に促され、カバンを肩にかけた。
ふたりで並んで教室を出る。
下駄箱でローファーに履き替え、玄関を出ると、何やらざわざわしていた。
美華と顔を見合わせて、歩いていくと、
「何やってんの?あれ。」
「さあ?ケンカ?」
なにやら揉め事のようだ。
そして揉めていたのは、
「あたしが先に約束してたのよ!」
「嘘ついてじゃないわよ!ちょっと梓!なんとか言ってよ!」
黒河とふたりの女子だった。

