それから数日経ったある日のこと。
「あ、香澄ちゃん!いたー!」
そんな、耳に障るような声が聞こえたのは。
声の主に失礼だとは思うけど、そう思わざるを得ない。
お昼を食べ、トイレに行こうと教室を出て歩き出した時だった。
できれば関わりたくない。振り向きたくない。
だけど、名前を呼ばれてしまったからには無視するのもなあ......
「探したんだよお?」
なんて呑気に考えていたら声はもうすぐそこまで来ていて。
振り向けば案の定、この前資料室で梓に告白した女の子が立っていて。
顔を見なくたって分かったから。だから嫌だったんだ。
私より全然背の低いその子は私を上目遣いで見つめて。
きっとこの可愛さが男の子にも人気なんだろうな、と不覚にも納得してしまうくらい。
「探したとは....私のこと?」
「うんっ!よければ話さない?」
ああ。面倒くさい。
可愛げに首なんて傾げてるけど。
目は笑ってない。......気がする。
まるで『断らないよね?』と、私に言っているような目線。
「トイレ、行きたいんだけど。」
なるべく関わらないのがいい。
そう思って言ったけど。
「ちょっとだけだよぉー!」
そう、語尾を上げて言ったあと、「だからグチグチ言ってないでさっさとついてきなさいよ。」と、ドスの聞くような低い声で言った。