梓と同様、椅子から立ち上がる。
先に歩き出した梓の後を追った。
やってきたのは誰もいない空き教室だった。
どんな話が繰り広げられるのかと、ドキドキする。
教室の教壇に腰をかけた梓は、「香澄もおいで」と、自分の隣に私を座らせた。
少しの沈黙。
そして、梓が口を開いた。
「さっきのこと、ちゃんと話そうと思って。」
「う、うん...」
やっぱりさっきの女の子との話か。
「あの子は同じクラスでさ。告白されたんだけど、俺は香澄一筋だからってちゃんと断った。」
「......うん。」
やっぱり私は単純なんだろうな。
『香澄一筋だから』
そんな一言を聞いただけで、さっきまでの不安なんて一瞬で飛んでいった。
にやけてしまいそうな頬に力を入れ、真顔を保つ。
「図々しいだろうし、わざわざ言うのもどうかと思ってたから香澄に言おうとは思ってなかったんだけど、ばったり会っちゃったし、不安そうな顔してたから。少しでも、その不安を取り除かなきゃって思ってさ。」
優しくそう言う梓に、不覚にも胸キュンしている私を誰か殴って欲しいくらいだ。
私のことを思って、私の不安を取り除いてくれようと、優しい言葉をかけてくれてる。
私だって、梓のことを疑っているわけでも、信用していない訳でもない。

