【完】恋なんてするものか!




冬ということもあり、夕方なのにあたりはすっかり暗くなっていた。



「寒いね....」



「冬だからな。ほら、手貸して。」



私が梓に手を差し出すよりも先に、私の手を握る。



繋がれた右手は、あっという間に温かくなった。




手を繋ぐのなんて、当たり前みたいになってきてるけど。



まだ付き合ってはないんだよね....私たち。




梓は私のことを好きだって言ってくれてて。



私も梓のことを好きだって気づいて。



ふたりの思いは一緒だけど。



まだ、通じ合えてない。




でもそれは全部私のせいなんだけど.....



「あのお店、めっちゃ美味かったし、また行きたいな。」



「うん、そうだね。」



「ていうか、マジで寒いな。香澄の鼻赤くなってるし早歩きで帰るか!」



私のことを思いやってそう言ってくれたんだろう。



さっきまでより、少し歩くスピードを速めた梓。




だけど、歩くスピードが速くなればそれだけ家に着く時間も早くなる。




なんか、それもそれで寂しいかな、なんて。



別に、あえなくなるわけじゃないんだけど。




不思議とそう思ってしまう。



なんでかな。ふたりでいる時間がとても心地いいからかな。




「速くない?大丈夫?」




「うん。」




少し早歩きをしたおかげで、体がポカポカ温かくなってきた。



なんか、ふたりして競歩の競技をしているみたいで、少しおかしくて笑えてくる。



あっという間に家までついてしまった。



家に着くころには少し暑いくらいだった。