でもそれも幸せのひとつなんだなあ、と思う。
「てか、香澄ももっとガツンといけばいいんだよ!ね?凛ちゃん!」
「香澄ちゃん、あずくんのことになると一層可愛さ増すもんね!」
今日もこんな感じ。
梓がトイレに立ったタイミングでそんなことを言い出すふたり。
いやー、そんなことは重々承知してるんですけどね?
できないから困ってるんだけど。
「黒河のことになると乙女すぎってくらい乙女だよね!」
乙女になってるっていう自覚はないんだけどなあ。
なんでか奥手になっちゃうというか。
「香澄ちゃん!ファイトだよ!」
ふたりとも応援してくれてるんだよね。
そのふたりの応援に応えたい思いは山々なんだけど。
どうも自分のことをコントロールできなくて。
もう時間がないってこともわかってる。
でも焦ってもいいことないってことも。
1番難しい時期なのかも。
「あれ、俺がいない時に何の話?」
そんなとき脳天気な梓が帰ってきた。
ニヤニヤし始めるふたり。
「べつに普通に雑談よ!」
「ふーん。てっきり俺の話でもしてるのかと?」
鋭いといえば鋭いけど。
なんでそんなに自信満々なのよ!
よくもまあそんなことを恥じらいもなくいえるわね!
「そ、そーんなわけないでしょ!」
「ふーん。」
何か言いたげな顔で私のことをニタニタと見る梓。
梓の目を見ることができず、目が泳ぐ。

