ここまで言われたら、なにかひとつでも梓のためになるようなことを言ってあげるのが普通なんだろうけど。
梓の気持ちに応えるような言葉も、断るような言葉も、なにひとつ出てこない。
「香澄に嫌われるようなことだけはしたくねーから。嫌なら嫌って言ってくれた方がいい。その方が俺のためになるし、香澄のためでもあるだろ?」
梓は私よりずっとずっとおとなだね。
私の周りにいる人は。
梓も、美華も、凛ちゃんも、そうちゃんも。
みんな大人だ。
伝えたいことを伝える強さを持ってて。
素直に自分の気持ちを伝えられることができて。
私なんかとは全然違う。
自分がガキすぎて。嫌になる。
「香澄が嫌がらないのなら俺は、もう遠慮なしに本気で香澄を奪いにいく。だから......今まで以上に覚悟しておくんだな。」
ニヤリと笑った梓。
梓は知らない。
そんな本気で私を奪いにこなくても、私はもうあなたに、心を奪われてるってことを。
もう、悠長なことはしていられないってことくらい自分でもわかってる。
そろそろ、自分の気持ちを彼に伝えなきゃ。
私が梓に気持ちを伝えなきゃいけない時はもう迫ってきてる。
今までみたいに変な言い訳つけて、強がって、逃げてばかりじゃいけない。
向き合わなきゃ.....ダメなんだ.....
私と梓は校門まで一緒に向かい、「送るよ」と言って聞かない梓をなんとか説得し、別々に帰った。
.......ちゃんと言うから、もう少し。
もう少しだけ、待っててね.....

