凛ちゃんにも美華にも、これでもかと言うほど素直になれって言われたのに。
なんでこう、うまくいかないかなあ。
自分でもふしぎでしかたない。
「まじ、心の底から喜んでる。ニヤけそうなの、必死に耐えてる。」
真顔で.......そんなこと言うもんじゃない。
てか、にやけてるのバレバレだけどね?
「.....」
こうやって、真っ直ぐ目を見て。
何も言わせまいと、本気の顔して。
そういう時は、私も口が開かなくなる。
「素直じゃない香澄ちゃんのために、義理チョコってことで許してやるよ。」
「う、うん....」
「でも、本当はちゃんと知ってるからな。」
と、再び私の頭をなでる。
ほっこりと、心が温まった。
梓にはきっと、これからも勝てないと思い知らされた感じがする。
そうだよ......
梓だけに作ったんだよ。
梓のことを思って.....人生で初めて、好きな人に作ったバレンタインのチョコ。
きっと、こんな私よりももっと上手で美味しいチョコ作った女の子なんてたくさんいる。
だけどね....
こんなこと思うの、柄じゃないって自分でもわかってるけど。
梓のことを誰よりも思って作ったんだよ.....
このチョコに込めた梓への思いは、誰にも負けない。

