あー、後悔しても遅いのに。
「ココ。誰にもあげてないんでしょ?」
と、私の唇を親指でなぞる。
ゾクゾクっと背筋に寒気が走る。
「こんなに可愛いのに......もったいねー。」
どうせ。
同じようなこと、いろんな女に言ってるのに。
可愛くない子にだって、可愛いって言ってるのに。
そう、分かってるのに。
ドキドキしてしまってるのは、
私が恋愛経験がないからなのか。
彼の女扱いの技術が想像以上に上だからなのか。
「ふっ。いつも気つえーくせして、今はこうやって恥ずかしさと戦ってるとこ見るとさ。燃える。」
「早くどきなさいよ。」
「やだって言ったら?」
「ぶ、ぶっ飛ばす。」
「そんな顔真っ赤にして?」
もう!
なんで何も言えなくなる!
いつもだったらこんなやつのこんな言葉、どうにかできんのに。
この体勢と、黒河のせいで思考回路がストップしてる。
「かっ、からかうのもい、いい加減にして!」
どうにか声を振り絞る。
このままじゃ、声すら出なくなってしまいそうだ。
私が怒鳴ると、
「ま、こんくらいで許すか。」
と、私を起こした黒河。
「さ、触んな!」
「気利かせて起こしてやったのに、そりゃねーだろ。」
だ、誰も頼んでない!
私はよろよろと立ち上がった。
カバンを肩にかける。
「お、女の子にモテるからって、調子乗らないでよねっ!!!」
最後にそう言って、私は教室から飛び出した。

