【完】恋なんてするものか!








ドキドキと、中庭に近づくにつれて大きくなっていく胸の鼓動。






ああ、なんて言って渡そう。





どんな顔で会おう。





ちゃんと笑えるのか、不安で。






中庭のベンチに見えた、梓の後ろ姿。





声をかけようと、思ってはいるけど勇気が出ない。





あー、この意気地無しが!






「あ、ず、さ......」




聞こえるか聞こえないか、そのくらい小さな声で名前を呼んだ。






ゆっくりと振り返る梓。






「なんだよ、その蚊のなくような声は(笑)いつもの勢いはどうしたんだよ!」






私の気持ちも知らずベラベラとよくもこう、人を小馬鹿にするようなセリフが出てくるもんだな。






逆に尊敬モンだわ!






「か、蚊の鳴くような声だなんて、失礼ね!」





「お前はそっちの方がいいよ!」





「いたっ!」





見事にデコピンをお見舞いされた。




もうこの痛さはぜったいおでこ赤くなってるやつじゃん!






「まあ、座れよ。」





「う、うん.......」




私は梓の隣に腰をかけた。





「あのさ、なんなのこの微妙な距離は。」




「え、ふ、普通じゃない?」





「喧嘩売ってんの?こっちこいよ。」




「ひゃあっ!」





無理やり私の肩を抱いて自分の方に引き寄せた。





バランスを崩した私は、梓の肩に頭を乗せる形になってしまった。





急いで頭をどかそうとすると、梓の手が私の頭に伸びてきて、





「このままでいろよ。」




そう言う。




「だ、誰かに見られたらどうすんのよ!」




まだ放課後になってそんな時間経ってないだろうし、生徒だって先生だってまだまだいるでしょ!!




「見せつけときゃいーの。」




「ばっかじゃないの!?」





「おい、黙んねーとそろそろその口塞ぐぞ。」





「......くっ」





「ぶっ.....!!」





くっそおおおお!




なんで大人しくなってる私!